【理想のサウナ（LBS）】空き家問題解消にも一役　大家が借り手を選ぶ不動産仲介サイト“さかさま不動産”に注目

全国各地で問題となっているのが「空き家」です。この空き家問題の対策を地域の起業家支援につなげようという取り組みが名古屋から全国に広がっています。その名も「さかさま不動産」です。

さかさま不動産の元には名古屋市をはじめとした自治体や東海地方の銀行なども相談に訪れていました。

名古屋市に住む恩田雅行さん。築63年の空き家を借りて、知多牛を売りにした焼き肉店の開業を計画しています。飲食店の経営は初めて。経営者として実績のない恩田さんは、物件探しに苦労しました。

恩田雅行さん：
「（物件を）信頼のある方に貸したいというのは分からないでもないが、（不動産を応募して）6件落ちる。心折れますよね」

そこで最後に頼ったのが「さかさま不動産」です。

物件を借りたい人の情報を集めた「さかさま不動産」

さかさま不動産とは、不動産仲介サイトです。並んでいるのは物件ではなく、「借りたい人」の情報ばかりです。例えば「手づくり楽器のアトリエが借りたい」「ある程度音出しOKな場所希望」「身の回りのものやごみを使って楽器をつくり全国を回りたい」。そんな思いに賛同した空き家の所有者が現れればマッチング成立です。借りたい人が物件を選ぶのではなく、物件を持つ人が借り手を選ぶ。だから“さかさま”なのです。

さかさま不動産を利用した起業家の中島惇生さんに話を聞きました。中島さんがオープンしたのは、築70年以上の空き家を改装した古民家サウナです。今や全国からサウナーが集まる人気店です。

理想のサウナをつくりたい

中島惇生さんはサウナ好きが高じて「理想のサウナをつくりたい」と、メガバンクを退職して起業しました。こだわったのは庭を改装してつくった外気浴スペースです。

中島惇生さん：
「フィンランドで芝生に寝転がって外気浴した経験を再現した」

しかし理想のサウナ建設にあたって、問題がありました。

中島さん：
「外から見渡せなくて、立地が良くて外気浴ができてという物件はそんなになかった。
不動産経由でオーナーと会話をしたが、その中で『サウナはちょっと……』（と敬遠される）」

一方物件の持ち主は、なぜ空き家を貸すことに決めたのでしょうか？

大家 河野 晋さん：
「（さかさま不動産では）僕の条件も満たす借り手を選べる」

その条件とは、思い出が詰まった庭を残すことでした。

河野さん：
「彼（中島さん）の情熱と、庭を保存してくれそうなところが決め手となって貸すこととなった」

さかさま不動産ではこれまでに20件以上のマッチングを手がけてきました。

さかさま不動産 代表 水谷岳史さん：
「不動産情報を公開したい人はすごく少ない。自分の家が空き家だとばれると防犯上危ないのではないかと、貸したいと思っていない。けれども（活用法は）選びたいニーズは調べていくとある」

国土交通省の空き地・空き家に関するアンケートによりますと、所有者の約72％が、「貸してもよい」と思っています。一方で、「不動産仲介業などに広く情報を出してもよい」と思っている人は、わずか15％にとどまっています。

水谷さん：
「大家はただの不動産所有者ではなく、誰かに投資・応援してくれる文化が育てば、（事業を）やりたい人が増えたり、続けたりしやすい環境がつくれるかもしれない」

日本経済新聞社 記者：
「さかさま不動産は、地域の経済を支える起業家の支援と空き家問題という2つの問題を一挙に解決する一石二鳥の取り組みです。現在そのネットワークは全国に広がっているので、今後さらに利便性が上がり、利用者の増加が期待できそうです」

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